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日本が”安い”!?その理由と外国との比較~安いニッポン 「価格」が示す停滞~

柴ジロー
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どうも、柴ジローです。

今回は、『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(中藤 玲 (2021), 日経BP)という本が面白かったので、どのようなことが書かれているのか、どのような人にお勧めできるのかについてお話ししようと思います!

まず、本書をおすすめしたい人と、あまりおすすめできない人は、それぞれ以下のような人です。

【本書をおすすめしたい人】

世界から見た日本の経済状況を物価の観点からざっくり知りたい!という人

物価が下がる(デフレ)のは、なぜ悪いことなのかについて丁寧に説明して欲しい人

【本書をおすすめできない人】

具体的な数字を用いて詳細(経済学的)に日本経済の現状を知りたい人

多角的な観点(指数や論説)から日本経済を整理したい人

後程、私の感想をお話ししますが、ざっくりとした感想は「物価と給料という観点のざっくりとした日本経済の話だな」というものです。

日本経済に関する専門的な解説を詳細に解説して欲しいという人には物足りないのかな、と思いました。

ですが、私のように経済学の初心者が読むと、大変分かりやすく面白い本でしたので、たいていのビジネスマンは面白く読めると思います。

詳しくは本書の概要からご説明いたします!

『安いニッポン 「価格」が示す停滞』の概要

ディズニーランドのチケットって十分高いのに、日本が一番安いって本当!?

本書では、日本の物価がいかに安いのかが書かれています。

と言っても、我々日本人にとって、日頃物価が安いとは感じませんよね。

柴ジロー
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本書で書かれているのはあくまで外国と比べた場合の評価です。

ディズニーランドのチケットや回転ずし、100円均一などは外国にも展開されている事業ですが、その価格は日本が一番安い。

回転ずしや100円均一に関しては「日本から輸出しているから高いんだ」とか言いたくなりますが、違います

日本のモノの価格、つまり物価が安いのです

本書では物価の上がり具合についてアメリカと比較していますが、アメリカでは毎年平均2%物価が上がっています

アメリカの2020年の物価水準は2000年の物価水準の50%ほども高いとのことですので、日本と比較した場合には、かなり安く感じられそうですね!

日本は1995年ごろから物価がほとんど変わっておらず、むしろ下がっている品目の方が多い。

世界における物価の上昇に取り残されているのです。

でも、なぜ外国と比較して日本の物価が上がらないのでしょう?

色んな企業が努力してくれてるからとか、日本の技術力が高いので物価が安くできているだけでしょうか?

給料の低迷が続いているので物価も上がらない

日本の物価が安い理由、それは”給料が上がらないから”です!

本書では日本の給料(=実質賃金:実際に手にした給料から物価の変動分を引いた金額)は約20年間下がり続けていることに触れています。

皆さん、自分の給料が上がらないのに「もっと高いものを買おう!」とはならないですよね。

むしろ給料は下がっているので、「今まではちょっと高いモノも買ってたけど、もっと安いモノを買おう」となります。

すると、お客さんにモノを買って欲しい企業は、「仕方ないから商品を値下げして商品を買ってもらうようにするしかない」となり、物価の低下が起こるわけです(これが”デフレ”ですね!)。

私たちにとって、物価が上がらないのは”良いこと”でも、給料が上がらないのは悪いことですよね…。

私たちが今まで必死に培ってきた技術や知識が企業から安く買われるのです

柴ジロー
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ですが、企業側も商品を値下げするために、従業員の給料も下げるしかありません。

当然、私たちを雇う企業側にもほとんど余裕はありません。

従業員の給料を安くしても、自分たちの商品を値下げしないといけない上に、売れにくい環境になるからです。

すると、新しい技術や質の高い商品を作るための研究などにもお金を出せません。

給料が上がらないということは、私たちにとってだけでなく、国の成長にとっても悪いことなのです

安いニッポンが”買われている”

また、給料が上がらないと、日本のあらゆる長所が外国に”買われる”ようになるのです

皆さん、今まで必死に生きてきた中で身に付けた知識や技術、できるだけ高く買って欲しいですよね。

「日本のために優秀なあなたに年収400万円で働いて欲しい!」という企業と、「外国の企業だけど、あなたは優秀だから年収800万円出すから働いて欲しい!」という企業では外国の企業に就職しますよね。

本書で書かれている、アメリカや中国では物価も毎年上昇していますが、給料も同じように上がっているんです。

実際にアメリカのカリフォルニア州では年収1,400万円の人は”低所得”に分類されるそうです。

柴ジロー
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お、恐ろしい…。

日本の一番給料の高い地域は東京の港区ですが、港区の平均年収は1,200万円程度なので、日本とアメリカの所得の差を実感しますよね。

外国の企業から見ると、日本の人材は”お買い得”なのです。

日本で人を雇う場合に、日本の企業よりも高い給料を払うとしても、海外の企業は平気です。

海外の企業における当然の給料を支払うことで、日本の優秀な人材を雇うことが出来ますから、どんどん優秀な人材を雇えるわけです。

また、海外の企業から見て”お買い得”なのは人材ではありません。

日本の会社も土地も商品も、彼らにとっては”お買い得”なのです。

本書では、外国の様々な企業が日本の人材や土地を次々に買収している事例が紹介されています。

このままでは日本の美味しいところを外国に持っていかれてどんどん貧しくなってしまう!というわけですね。

感想:本書は日本経済の入門書的な一冊

本書で書かれているのは、“デフレって悪いことだよ”という一点

本書は、内容が面白く非常に分かりやすい説明を色々な業界の当事者とのエピソードを交えて書かれており、「面白い本だったなぁ、沢山売れそうな本だなぁ」と言うのが感想でした。

特に、物価の指標として各国のディズニーランドのチケットを例に出している部分は、多くの人の関心を得られるところだと思いますし、私も興味を惹かれました。

一方で、本書に書かれている点は、“デフレって悪いことなんだよ”という一点だという風に感じました。

日本の物価・給料に注目し、日本が長年デフレであることを、インフレ率や外国の物価などを用いて説明しています。

また、その長年のデフレが日本にとってどのような悪影響を及ぼしているのか、また、及ぼすのかについて書かれております。

デフレからの脱出方法についても書かれていますが、その部分は他の部分に比べてあまり掘り下げられていないように感じました。

本書は非常に分かりやすい日本経済の入門的な一冊

よって、本書の評価は“非常に分かりやすい日本経済の入門的な一冊”と言えるかと思います。

「日本がデフレだと言うけれど、そもそもデフレって何?デフレって何が悪いの?」と言うことを改めて整理したいという人にとっては凄くいい本だと思います。

私もそんな一人でしたので、読んでいて大変面白かったです!

一方で、日本経済について色々な経済指標を用いて詳しく知りたい!と言う人にはあまり向いていないかも知れません。

冒頭でも述べましたが、国の経済を正しく評価しようとすると、物価・給料だけでは不足していると思いますし、その国の政治のスタイルなんかも考慮した方がいいと思います。

ただ、繰り返しになりますが、本書の目的は、あくまで“物価・給料から見た時の日本経済の評価”がお話の中心ですので、私のような経済の勉強を始めたばかりの初心者には大変興味深い一冊と感じました。

+α:外国の経済問題の一つは”深刻な格差”

私は今までに5か国ほど外国に旅行・出張した経験があります。

そこでは確かに、「海外のモノって高いな」と感じました。

普通に外食するだけでもチップを含めると3,000円程度しますし、カップラーメンなんかも日本より50円程度は高かった記憶があります。

柴ジロー
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しかも、「すごい美味しい!!」って訳じゃなかったし、店舗の中もあんまりキレイではありませんでした。

日本に帰国するたびに「日本は治安もいいし、モノも安い、サービスも良い」と思いました。

ですが、私が行ったのは一部の観光地です。

ところで、経済の特性は物価・給料だけでは語れません。

国全体として見たときに、外国と日本はどう違うのかを知りたかったので、外国の経済指標について少し調べてみました。

日本の物価は確かに安かった!!

上の表はインフレ率(物価の上がり具合)を表しており、G7の国々と韓国・中国を合わせた9国のものを示してます。(※1のデータから作成)

インフレ率は高すぎても低すぎても経済的に良くなく、2〜3%が良好な範囲とされています。

表を見ると、確かに日本のインフレ率(グラフの太い紺色のデータ)はずっと低い位置に留まっており、外国と比べても物価が変わっていないということが分かりますね。

このような観点で見るとアメリカ(グラフの赤のデータ)の推移がもっとも理想に近く、経済的に良好と言えます。

インフレ率のグラフだけを見ると、”安いニッポン”と言えそうですね。

ただ、それはインフレ率だけを切り取った解釈です。

アメリカ・中国の問題は日本よりも深刻な国内の格差

ということで、次は外国の他の経済指標も見ていきましょう。

上の表は各国のGDPです。

アメリカ・中国のGDP(グラフの赤とオレンジのデータ)は世界でもトップの増加具合で、さすが世界経済の2強と言う感じですね。

上の表は一人当たりのGDPです。

国民一人当たりどのくらい稼いでいるか、というと分かりやすいでしょうか。

アメリカはさすがと言うべきの伸び具合ですが、一方、中国は一人当たりのGDPは最も低いです

これは中国は人口が多く、国内の貧富の差も非常に激しいため、国内のGDPを人口で割った際に低く出てしまうんですね。

このような事実があるので、中国は”先進国”に分類されていないんですね。

また、国内の格差を示す経済指標としてジニ係数というものがあります。

このジニ係数が大きければ大きいほど(最大は”1”)国内の格差が大きいことになります。

中国のジニ係数は現在0.47※2であり、アメリカは0.39※3です。

日本のジニ係数は0.34※3であり、2国とも日本よりも貧富の差が大きいということが分かりますね。

中国は言うまでもありませんが、近年はアメリカでも貧富の格差が拡大しています。

なんと、「アメリカ人の下層半分を合計すると、その純資産はマイナスだ※4」という事実が指摘されています。

つまり、アメリカ国民を資産の少ない順に並べて半分以下の人が所持している価値あるモノ(お金や家、車など)を足すと、マイナスになる、ということです。

これは大半の人が借金をしながら生活しているため、起きうることです。

アメリカ・中国については”経済の発展とともに物価は正常に上昇しているが、格差も広がっているため、下層に位置する多くの国民にとってはつらい状況になりつつある”と言えそうです。

最後に

柴ジロー
柴ジロー
いやー、経済のお話って面白いですね!

日本だけだと「給料が下がってても、物価も下がってるなら問題ないじゃん!」ってなるところが、外国との関係もあるとそうはいかない

自分が生活している国・環境は常に外部とのバランスで状況が変わるということを教えてくれます。

もっといろいろな本を読んで、知識を深めていきたいですね!

それでは、本日はこの辺で。じゃあね!!

【引用元】
※1:IMF – World Economic Outlook Databases
※2:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-06/QYZH2DDWX2PS01
※3:https://vicryptopix.com/gini/
※4:https://www.businessinsider.jp/post-191278

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